この記事をまとめると
■最近のクルマは重く、燃費やタイヤの減り具合などに多大な影響を与えている
どこが便利でどこが不便? 「EV乗り」がホントのところを語る!
■車重が増えると移動体としての効率は悪化するが、クルマ同士の衝突時の乗員への被害は少なくなる
■車重は軽くても重くてもメリット・デメリットがある
ハイブリッド車やEVの登場で車両重量も増加
最近のクルマは重い……そんな印象をもっている人が多いのではないだろうか。
航続距離が長いハイパワーなEV(電気自動車)では車重2tを超えるケースは珍しくない。ハイブリッド車も、エンジンとモーターと駆動用バッテリーを積む関係から、純エンジン車より100kg前後は重くなっていることが多い(参考:ヤリスZグレードの場合、HEV:1090kg、ICE:1020kg)。
また、エンジン車であっても、流行のSUVともなれば、同クラスのセダンやハッチバックより重くなりがちだ(参考:ヤリスZグレードFF HEV:1090kg、ヤリスクロスZグレードFF HEV:1190kg)。
車重が増えることによるデメリットのひとつが、移動体としての効率悪化だ。それを象徴するのが燃費性能で、同じ1.5リッターハイブリッドのヤリスとヤリスクロスを比べると、前者のWLTCモード燃費が35.4km/Lなのに対して、後者は27.8km/Lとなっている。
燃費には車重のほかに空気抵抗やタイヤの違いなども影響するので車重だけで燃費が悪くなっているとはいえないが、それでも車重と燃費にある種の相関があることは認められる。車体をカーボンやアルミといった軽い部材に置換する動きがあるのは、移動体としての効率を高めるためといえる。
燃費や走行性能への影響が大きい車両重量
タイヤやブレーキパッドといった消耗品についても、車両重量の影響は無視できない。条件を合わせて比べると、車両重量が重いほうがタイヤやブレーキパッドの消耗は早くなりがちだ。
もっとも、減速エネルギーで発電する回生ブレーキ機能をもつEVやハイブリッド車はメカブレーキへの負担が少ない傾向にあり、タイヤについても車重に合わせてサイズや銘柄、指定空気圧なども異なるため、実際に消耗が激しいかといえばそれほどの違いを感じないという事実もあるが……。
ちなみにEVの電費についても車両重量が軽いほど有利となる。航続距離を稼ごうとして多くのバッテリーを積んで車体が重くなると、じつはそのぶんだけ電費に不利で、航続距離が短くなってしまうというのは、EVのジレンマとして知られているところだ。
とまぁ、モビリティとしての効率(経済性)を考えると、クルマは軽いほうが有利といえるが、車体が重いほうが有利になるのは衝突時だ。車両単体で壁にぶつかったときの衝突安全性については、いまやコンパクトカーや軽自動車でも高いレベルにあるが、車両同士の衝突になると、物理的に大きく重いほうが相手への攻撃性が強く、自車の被害を抑えることができる傾向にある。
「コンパチビリティ」といって、大きなクルマは衝突時の他車攻撃性を抑えるようなボディ設計となっているが、そもそも重いということは衝突時に有利なのは、物理法則的には避けられない事実だ。
動画サイトなどで検索すると、さまざまな衝突実験映像を見ることができるが、たとえ大型SUVであっても巨大なトラックとの衝突実験ではキャビンがグシャリと潰れてしまう様子が確認できるだろう。
また、車体が重いということは走行安定性においてはポジティブな影響を与えることが多い。とくに直進安定性や乗り心地といった面においては、大きくて重いクルマは有利な傾向にある。
逆に、ブレーキングや加速といった挙動の切れ味においては、車体が軽いほど、文字どおりの「軽快感」が生まれてくるのは、クルマ好きにとっては常識だろう。ライトウエイトスポーツという言葉があるように、気持ちよいドライビングと車体の軽さは切っても切り離せない関係にある。
まとめると、車重は軽くてもメリット・デメリットがあり、重いクルマも同様にメリット・デメリットがある。単純に適正な重量があるとはいい切れないから難しい。
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